結論|1本1,200円で発注しました
先に結果を出します。2026年8月、当社は法人設立に使う会社の実印(代表社員印)を、ネット通販の印鑑店で次の条件で発注しました。
- 価格:1,200円(送料無料・10年保証つき)
- サイズ:直径18.0mm(天丸型)
- 素材:柘(つげ)
- オプション:印影の事前確認(校正)つき
- ケース・印袋:なし(0円)
よく見る相場(3本セットで9,000〜18,000円)と比べると、およそ10分の1です。安くできた理由は「安い店を見つけた」からではなく、「何が本当に必要か」を先に整理したからです。順に説明します。
価格についてのお断り
この記事の価格はすべて2026年8月の調査時点のものです。印鑑の価格・送料・オプション料金は変動します。参考にされる場合は、注文前に必ず販売ページで最新の価格をご確認ください。また、特定の店舗の優劣を論じる意図はありません。
そもそも「3本セット」は必要か
会社の印鑑といえば「実印・銀行印・角印」の3本セットが定番です。しかし1本ずつ役割を確かめると、こうなります。
- 実印(代表者印) 法務局に届け出る、会社の正式なハンコ。登記に必須なのはこれ1本だけです
- 銀行印 法人口座の届出印。実印と兼用できます。分ける利点は「銀行印だけ盗まれても実印は無事」という危険の分散ですが、一人会社で保管場所が同じなら、分ける意味は薄くなります
- 角印 請求書などに押す四角いハンコ。法的効力はありません。慣習として押されているだけです
当社は請求書・見積書をすべて電子で発行しているため、角印は物理のハンコではなく電子印影(画像)で足ります(後述)。銀行印は実印と兼用。結果、買うべきは実印1本だけという結論になりました。
ここは会社の業態によって答えが変わります。紙の書類を日常的に大量に扱う会社や、経理を複数人で分担する会社なら、使い分けのために複数本持つのが合理的です。大事なのは「定番だから3本」ではなく、自社の業務から逆算することです。
規格さえ満たせば、値段は関係ない
「安い印鑑で登記して大丈夫か」と不安になる方もいると思います。ここは制度がはっきりしています。
商業登記規則が定める条件は、印影の大きさが「1辺1cmを超え、3cm未満の正方形」に収まること。これだけです。素材が柘でもチタンでも、値段が千円でも数万円でも、法務局での扱いは同じです。
つまり実印の価格差は、法的な効力の差ではなく、素材の耐久性と見た目の差です。実印は日常的に押すハンコではありません。登記と、ごくたまにある重要な契約くらいです。押す回数が少ないなら、高耐久の素材に払うお金は回収できない。当社はそう判断しました。
実際の比較|価格はここまで違う
2026年8月に、ネット通販の複数の印鑑店で「法人実印1本(柘・18mm前後)」の価格を調べた結果の要約です。
| 選択肢 | 価格帯(調査時点) | 備考 |
|---|---|---|
| 法人3本セット(相場) | 9,000〜18,000円 | 実印・銀行印・角印。ケース込みが多い |
| 3本セットの底値クラス | 4,000円前後 | 素材や仕上げは値段なり |
| 実印1本(柘・16.5〜18mm) | 約1,000〜1,400円 | 送料無料の店が複数。当社はここから選択 |
| 同・即日/翌日出荷オプション | +600〜900円程度 | 急ぐ場合のみ意味がある |
同じ「柘・18mm・1本」でも、店と配送条件によって数百円の幅があります。そして注目すべきは、同じ店の同じ商品でも、納期のオプションで価格が大きく変わることです。当社の場合、設立日から逆算して数週間の余裕があったため、通常便を選び、即日出荷との差額600〜900円を払わずに済みました。急ぐ理由を作らないことが、いちばん簡単な節約でした。
なぜ最安の990円を選ばなかったか
調査時点の最安は、ひとまわり小さい16.5mmサイズ・校正なしの990円でした。当社が選んだのは1,200円。差額210円で2つの保険を買ったという判断です。
保険1:印影の事前確認(校正)で差額100円
会社の実印に彫るのは、既製品にない固有の文字列です。当社なら社名と「代表社員之印」の組み合わせ。もし彫り上がりに誤字があれば、全損=作り直しで、代金だけでなく登記の日程まで飛びます。彫る前に印影の画像をメールで確認できるオプションが100円なら、掛け捨ての保険として安すぎるくらいです。
保険2:18mmサイズで差額110円
16.5mmでも規格(1cm超〜3cm未満)は満たします。ただ、法人実印は18mmが一般的なサイズとされており、銀行や取引先の窓口で「小さいですね」と違和感を持たれない側に寄せました。110円で消せる違和感なら消しておく、という考えです。
2つ合わせて210円。「最安」と「最適」は違う。今回の買い物で得たいちばんの学びはこれでした。
角印は買わない|電子印影という選択
角印には法的効力がありません。それでも請求書に赤い四角が押してあると「それらしく」見える。この慣習のためだけに物理のハンコを買うと、当社の場合はむしろ仕事が遅くなります。
当社の請求書・見積書はHTMLの雛形から電子で発行しています。物理の角印を使うなら「印刷→押印→スキャン」という工程が毎回増えます。画像の電子印影を1枚作ってデータに載せれば、工程は増えません。
紙の文化が残る取引先が多い業態では答えが逆になるかもしれません。ここも「自社の業務から逆算する」の一例です。
発注前のチェックリスト
当社が発注時に実際に確認した項目です。これから作る方はそのままお使いください。
- 社名の表記を1文字も揺らがない状態で確定させる 「前株か後株か」まで。間違えたら作り直しで、費用も日程も倍になります
- 内枠の文字を確認する 合同会社は「代表社員之印」。株式会社用の「代表取締役印」を選ばない(合同会社に取締役はいません)
- 印影の事前確認(校正)オプションを付ける 固有の文字列を彫る以上、確認なしは危険です
- サイズは18mm前後、規格は1辺1cm超〜3cm未満 商業登記規則の条件を満たすこと
- 納期から逆算して早めに注文する 通常便+校正のやりとりで1〜2週間は見ておく。急ぎ料金を払う状況を作らない
この記事の前提と限界
1. まだ実物は届いていません
この記事を書いている時点で、発注は済みましたが実物は手元にありません。届いたら印影が規格どおりか(1辺1cm超〜3cm未満に収まるか)を確認する予定です。もし問題があれば、それも含めて追記します。
2. 安い実印が「正解」なのは、押す回数が少ない会社の話です
当社のように電子中心で仕事をする会社にとって、実印は年に数回しか使わない道具です。だから最安帯で十分という結論になりました。毎週のように実印を押す業態なら、耐久性のある素材に払う価値はあります。この記事の結論をそのまま全業種に当てはめないでください。
3. 210円の判断に、絶対の正解はありません
校正なしで問題なく届く可能性のほうが高いのも事実です。当社の選択は「低い確率×大きな損害」に少額の保険をかけるという考え方であって、990円を選ぶ判断を間違いだとは思いません。
ここでよく出る質問
会社の印鑑は3本セットで買うべきですか?
必ずしも必要ではありません。法務局への届出に必須なのは実印(代表者印)1本だけです。銀行印は実印と兼用でき、角印には法的効力がないため、書類を電子で発行する会社なら電子印影で代用できます。当社は実印1本だけを購入しました。ただし紙の書類を大量に扱う業態では、使い分けのために複数本が合理的な場合もあります。
安い印鑑で登記に問題はありませんか?
価格による制限はありません。商業登記規則が定めるのは印影の大きさ(1辺1cmを超え3cm未満の正方形に収まること)で、素材や価格は問われません。数千円の柘の印鑑でも、数万円の象牙でも、規格を満たせば同じように登記できます。
合同会社の実印で気をつけることはありますか?
内側の文字(内枠)です。株式会社は「代表取締役印」ですが、合同会社に取締役はいないため「代表社員之印」を選びます。ネット注文では株式会社向けの選択肢が初期設定になっていることがあり、ここを見落とすと作り直しになります。
この記事の価格は今も同じですか?
同じとは限りません。記事中の価格はすべて2026年8月の調査時点のもので、印鑑の価格や送料は変動します。参考にされる場合は、注文前に必ず販売ページで最新の価格と条件をご確認ください。
値段の幅と、品質の差
実印は、値段の幅がそのまま品質の差になっていません。
- 登記に必須なのは実印1本だけ 銀行印は兼用可、角印は法的効力なし
- 規格は「1辺1cm超〜3cm未満」だけ 価格や素材は法的には関係ない
- 1本に絞れば1,000円台から作れる 3本セット相場のおよそ10分の1(価格は変動します)
- 最安と最適は違う 校正100円とサイズ110円は、事故を防ぐ保険として払う価値があった
- 急ぐ理由を作らない 納期に余裕があれば、即日出荷の割増を払わずに済む
数千円の買い物の話ですが、「定番を疑って、必要なものだけに絞る」「安さより事故の防止を優先する箇所を見極める」という考え方は、金額の大きい買い物ほど効いてきます。当社の法人設立の全体の段取りは合同会社のつくり方|手順と費用の実録にまとめています。