「効果がない」と「マイナスになっている」は別の話
ホームページについてのご相談は、たいてい「効果がない」から始まります。問い合わせが来ない、アクセスもない、だから放っている。この認識には、ひとつ抜けている視点があります。効果がゼロなのか、それともマイナスなのかという区別です。
効果がゼロというのは、誰にも見られておらず、何も起きていない状態です。害はありません。一方でマイナスというのは、見られてはいるが、見た人が会社への評価を下げて帰っている状態です。看板が割れたまま立っている、と言い換えてもいいかもしれません。何も出していない会社より、印象が悪くなることがあります。
そして、多くの場合は後者です。理由は単純で、ホームページは検索から来る人だけが見るものではないからです。名刺を受け取った人、チラシを見た人、紹介された人、相見積りを取っている人——すでにその会社に興味を持っている人が、確認のために開きます。つまり、いちばん失いたくない相手に見られている、ということです。
マイナスに転じている8つのサイン
次のうち、ひとつでも当てはまるなら、そのサイトは見た人の判断材料として働いています。良い方向にとは限りません。
1. スマートフォンで開くと崩れる
文字が小さくて拡大しないと読めない、横にスクロールしないと全体が見えない、メニューが押しにくい。今はほとんどの人がスマートフォンで開きますから、ここが崩れていると、それ以外の内容がどれだけ良くても届きません。開いた瞬間に「古い会社だ」という印象だけが残ります。
2. 「新着情報」が数年前で止まっている
最新のお知らせの日付が3年前、というサイトは珍しくありません。書く材料がなかっただけかもしれませんが、見た人にはそう見えません。「この会社、まだ営業しているのだろうか」と受け取られます。更新欄がないサイトより、止まった更新欄があるサイトのほうが不利になる、という逆転が起きます。
3. 営業時間・料金・メニュー・スタッフが今と違う
ここは印象の問題では済みません。実害が出ます。閉まっている時間に来店される、載っていない料金で問い合わせが来る、辞めたスタッフを指名される。対応するたびに現場の手間が増え、来た人には「書いてあることと違う」という記憶が残ります。集客どころか、クレームの発生源になっている状態です。
4. アドレスバーに「保護されていない通信」と出る
URLが「http://」で始まったままのサイトです。ブラウザによっては警告が表示され、フォームの入力欄で注意書きが出ることもあります。中身の善し悪しに関係なく、開いた人が最初に見るのが警告表示という状況です。これは比較的簡単に直せる部類ですので、後述します。
5. 電話番号がタップできない
電話番号が画像として置かれていると、スマートフォンから発信できません。番号を覚えて電話アプリに打ち直す人は、ほとんどいません。かけようとしてくれた人を、その場で取りこぼしていることになります。地域の事業ではフォームより電話が多い場合が多く、影響は小さくありません。
6. 写真が実物と違う、あるいはフリー素材ばかり
改装前の店内、10年前のスタッフ、明らかに海外のオフィス風景。見る人は写真で雰囲気を確かめようとしていますから、実物と違えば「行ってみたら違った」という不満になります。フリー素材だらけの場合は、そもそも判断材料になりません。多少画質が劣っても、実際の写真のほうが役に立ちます。
7. 問い合わせフォームが動いていない
これがいちばん怖いサインです。送信してもエラーになる、送信されたはずのメールが迷惑メールフォルダに入っている、通知先が退職した人のアドレスのまま。問い合わせは来ていたのに、届いていなかった——実際にある話です。しかも、送った側には「無視された会社」として記憶されます。
8. 会社概要が古い、リンクが切れている
移転前の住所、変更前の代表者名、もう使っていないFAX番号、クリックすると存在しないページに飛ぶメニュー。ひとつひとつは小さいのですが、「管理されていない」という判断は積み重ねで下されます。著作権表示の年が数年前のままというのも、意外に見られています。
共通しているのは「放置の痕跡」です
8つのサインは、どれも技術的な難しさの話ではありません。すべて誰も見ていないことの証拠として読まれます。見る人は「デザインが古い」ことよりも、「手が入っていない」ことのほうを敏感に受け取ります。
サイトは「見つける場所」ではなく「確かめる場所」
なぜ、アクセスの少ないサイトでも損失が出るのか。ここを押さえておくと、優先順位が決めやすくなります。
すでに興味を持った人が、最後に開く
ホームページが果たしている役割は、新規のお客様を連れてくることだけではありません。むしろ実際に多いのは、他の経路で名前を知った人が、依頼する前に確認するという使われ方です。名刺の隅のURL、チラシのQRコード、看板を見て検索、紹介された会社名で検索。どれも、あと一歩のところにいる相手です。
そこで古い情報や崩れた画面を見せてしまうと、営業や紹介で積み上げた分がその場で削られます。プラスをゼロに戻す働きをしている、ということです。
相見積りでは、減点法で見られている
複数社を比較検討している人は、必ず各社のサイトを開きます。このとき見られているのは、提案内容そのものではありません。「この会社に頼んで大丈夫か」という不安材料の有無です。金額や条件に大きな差がなければ、最後は不安の少ないほうが選ばれます。更新の止まったサイトは、そこで減点材料として機能します。
紹介してくれた人の信用も削る
見落とされがちですが、これは重い話です。紹介を受けた人は、まず会社名で検索します。そこで「大丈夫かな」と思われると、紹介した側の目も問われます。次から紹介しづらくなる、という形で影響が出ます。紹介や口コミが売上の柱になっている事業ほど、ここは無視できません。
いちばん厄介なのは、損失が数字に残らないこと
ここまで読んで、「うちはそんなに問題は起きていない」と感じた方も多いと思います。それが、この問題のいちばん難しいところです。
離れていった人は、何も言わずに離れていきます。「サイトが古かったので他社にしました」と連絡してくる人はいません。クレームも来ません。問い合わせが来なかったという事実は、どこにも記録されないのです。だから「特に困っていない」と感じられてしまいます。
気づけるとすれば、こうした形での違和感です。
- 紹介の話は出るのに、そこから実際の依頼に至る割合が以前より落ちている。
- 問い合わせの一次反応はあるが、その後の連絡が途切れることが増えた。
- 「ホームページ見ました」と言われる回数が、ここ数年でほとんどなくなった。
- 逆に、電話口で会社の基本情報を毎回説明している。本来はサイトが済ませているはずの説明です。
いずれも決定的な証拠にはなりませんが、点検を始める理由としては十分です。
5分でできる自己点検
難しい調査は要りません。ご自身のスマートフォンで、自社のサイトを開いてみてください。パソコンからではなく、また社内のブックマークからでもなく、実際にお客様がする動きをなぞります。
- 会社名で検索して、そこから開く。そもそも検索結果に出るか、説明文がおかしくないかも同時に確認できます。
- 開いた最初の画面で、何の会社かが分かるか。地域名と業種が読み取れるかどうかを見てください。
- アドレスバーに警告が出ていないか。「保護されていない通信」の表示があれば、そこが最優先です。
- 電話番号をタップしてみる。発信画面が出なければ、画像で置かれています。
- 営業時間・料金・住所を読んで、今の内容と合っているか。一箇所ずつ声に出して確かめると、見落としが減ります。
- 問い合わせフォームから、自分でテスト送信する。届くかどうか、迷惑メールに入っていないかまで確認してください。
- いちばん新しいお知らせの日付を見る。それが何年前かが、そのまま見た人の印象です。
できれば、社外の人に見てもらってください
自社のサイトは、作った経緯を知っているぶん甘く見えます。取引先やご家族に、スマートフォンで開いてもらい、「この会社、どう見える?」とだけ聞いてみてください。数分で、社内では出てこない指摘が出てきます。
直す順番|作り直しは最後の選択肢
制作を仕事にしている立場で申し上げますが、ここまでの内容の多くは、作り直さなくても直せます。しかも、効果が出やすいのは、たいていそちら側です。順番をつけると次のようになります。
今日中に、費用をかけずに直せること
- 営業時間・住所・電話番号・料金・スタッフ情報を、現状に合わせる。
- フォームのテスト送信をして、通知先のメールアドレスを今使っているものに変える。
- 迷惑メールフォルダを確認する。埋もれた問い合わせが見つかることがあります。
- お知らせを1本書く。長い必要はありません。日付が動いていることが大事です。
更新の仕組みがなく自社で触れない場合でも、この4つは制作会社に伝えれば短時間で終わる作業です。
費用はかかるが、部分的な修正で済むこと
- 常時SSL化(httpsへの切り替え)。今のレンタルサーバーであれば無料で用意されていることが多く、設定作業だけで済む場合があります。
- 電話番号を文字にして、タップで発信できるようにする。あわせて受付時間を併記します。
- 写真を実物に差し替える。スマートフォンで撮ったもので構いません。古い写真より確実に役に立ちます。
- 切れているリンクの修正と、会社概要の更新。
作り直しを検討したほうがよい場合
次に当てはまるときは、部分修正では追いつきません。
- スマートフォン表示に根本的に対応しておらず、手直しでは崩れが解消しない。
- 自社で更新できる仕組みがなく、小さな修正のたびに費用と日数がかかる。そのために放置が構造的に起き続けている。
- 制作を頼んだ会社と連絡が取れず、更新も移管もできない。
- 事業内容や対象のお客様が、制作当時から変わっている。
逆に、内容そのものは今も合っていて、単に情報が古いだけであれば、作り直しても結果は大きく変わりません。まず直すべきは中身のほうです。
「ゼロに戻す」だけでも変化は出ます
マイナスをプラスにしようとすると大きな話になりますが、マイナスをゼロに戻すのであれば、多くは今週中に手をつけられる範囲です。減点材料を消してから、増やす話を考えても遅くありません。順番を逆にすると、費用ばかりかかります。
最後に、判断の基準をひとつだけ挙げておきます。そのホームページを、これから会う大事な取引先に自分から見せられるかどうか。見せたくないと感じるなら、それは今この瞬間も、お客様に見られている状態だということです。まずは自己点検の7項目から、試してみてください。
