フォームは、いちばん最後の一画面
問い合わせフォームまでたどり着いた人は、そのサイトの中でいちばん関心が高い人です。検索して、いくつか見比べて、料金を読んで、それでも押した。ここまで来るのに、相手はかなりの手間をかけています。
だからこそ、この一画面で落とす損失は他のどのページより重い。トップページで戻った人は、そもそもまだ検討していません。フォームで戻った人は、検討を終えて、あなたを選びかけていた人です。
それでいて、フォームは制作の一番最後に作られ、見直される機会もほとんどありません。伸びしろが残りやすい場所です。
なぜ項目が増えると減るのか
理由は「面倒だから」だけではありません。3つに分けて考えると、対処が見えてきます。
① 打つ手間そのもの
特にスマートフォンでは、1つの欄を埋めるのにタップして、キーボードが出て、変換して、次の欄へ移るという往復が要ります。パソコンで作っている側が思うより、はるかに重い作業です。フォームは必ず自分のスマートフォンで最後まで打ってみるべきです。
② 「まだそこまでの話ではない」という抵抗
相手はまだ、相談していいかを迷っている段階です。そこへ住所や予算を求められると、もう決めた人向けの窓口だと受け取られます。実際には気軽に聞いてほしいのに、フォームの側が勝手に敷居を上げていることになります。
③ 答えが決まっていない欄で、思考が止まる
いちばん厄介なのがこれです。「ご予算」「ご希望の納期」のように、相手がまだ答えを持っていない項目。ここに来た瞬間、埋めるべき言葉を探し始め、その場を離れます。手を止めるのは、難しい欄ではなく、答えの無い欄です。
必須にしてよい項目の決め方
判断の基準は1つで足ります。
「これが無いと、返信ができないか」
返信できるなら、必須にする理由はありません。管理のしやすさ、あとで集計したい、名簿として整えたい。どれも受け取る側の都合であって、送る側が手間を負う理由にはならないからです。
この基準を当てると、多くの業種で必須は次の3つに落ち着きます。
- 連絡先を1つ(メールアドレスか電話番号のどちらか)
- 名前(呼びかけに要るため)
- 用件(何の話か分からないと返しようがないため)
あとは任意で置いておき、必要になったら返信のやりとりで聞けば済みます。一往復増えるだけで、問い合わせの母数が減るよりずっと安い。
よく足されている、外してよい項目
相談を受けたときによく見かける欄です。事情があって残す場合も、必須は外すだけで効きます。
- ふりがな:郵送物を出す業種以外では、まず使われません。しかも全角・半角の指定で弾かれやすく、手間の割に損が大きい欄です
- 住所:見積りのために要るように見えますが、多くの場合、必要になるのは商談が始まってからです
- ご予算:相場を知らない相手には答えられません。入口ではなく、話の中で聞く項目です
- 希望納期:同上。「急ぎ/急がない」の2択にするだけでも、負担はかなり下がります
- 当社を何でお知りになりましたか:知りたい気持ちは分かりますが、これは完全に受け取る側の都合です。アクセス解析で見当はつきますし、商談の雑談でも聞けます
- 「上記に同意する」以外のチェック欄:確認事項が複数並ぶと、読む負担が一気に増えます
項目数以外で手が止まる箇所
数を減らしても止まる場合は、次を疑ってください。
- 入力チェックが厳しい:電話番号のハイフン、ふりがなの全角指定、番地の書き方。受け取る側で整えられる違いは、弾かないのが実務的です。何が悪いか分からないまま送信できない状態が、いちばん人を失います
- エラーが出た瞬間に、打った内容が消える:もう一度打ち直す人はほとんどいません
- 画像認証が入っている:迷惑メール対策として置かれますが、読み取りに失敗すると健全な問い合わせまで止めます。目に見えない方式の対策で足りることが多いです
- 送信後に何も起きない:送れたのか分からず、不安のまま終わります。完了したことを明示する画面を必ず用意してください
- 電話番号がフォームの近くに無い:打つのが面倒な人のための逃げ道です。スマートフォンではタップで発信できる形にしておきます
当社のフォームが5項目である理由
いま読んでいただいているこのサイトの問い合わせフォームは、欄が5つ、うち必須は3つです。
- お名前(必須) 返信の宛名に要るため
- メールアドレス(必須) 返信先として要るため
- ご相談内容(必須) 何の話か分からないと返しようがないため
- 会社名(任意) 法人の方の場合に、返信の書き方を合わせるため
- 電話番号(任意) 電話での返信を望まれる方のため
住所もふりがなも予算も聞いていません。いずれも、返信するために要らないからです。必要になれば、そのやりとりの中でうかがいます。
もうひとつ、ご相談内容の欄には記入例を最初から置いてあります。「まず無料デモを作ってほしい」「今の制作会社から乗り換えたい」といった具合です。自由記入の欄は、白紙で出されると何を書けばよいか迷わせます。選ぶだけで済む形に近づけておくと、負担が下がります。
明日できる見直しの手順
制作会社に頼まなくても、確かめるところまでは自分でできます。
- 自分のスマートフォンで、自社のフォームを最後まで打ってみる(パソコンでは気づけません)
- 欄を1つずつ見て、「これが無いと返信できないか」を自問する。答えが「できる」なら必須を外す
- わざと間違えて送信し、エラーの出方と、打った内容が消えないかを確かめる
- 送信まで通してみて、完了したと分かる画面が出るかを確かめる
- 実際に届いたメールを見て、返信に使わなかった項目に印をつける。過去半年分を見れば、外してよい欄がはっきりします
最後の1つが、いちばん確かな判断材料になります。使っていない項目は、聞く必要がなかった項目です。
よくあるご質問
項目は結局いくつが適切ですか?
数そのものより、必須にしている項目の性質で決まります。目安として、返信するために本当に要るものだけを必須にすると、多くの業種で3つ前後に収まります。連絡先1つ、名前、用件。それ以外は任意にしておき、必要なら返信のやりとりで聞けば足ります。
電話番号は必須にしたいのですが。
電話で折り返す運用なら必須にする理由はあります。ただし、電話番号を必須にすると「まだ電話までは望んでいない」段階の人が抜けます。相手はまだ比較の途中で、いきなり電話が来る前提の欄に強い抵抗を示すことがあります。メールで返せる体制があるなら、任意にしておく方が母数は増えます。
冷やかしや営業メールが増えませんか?
項目を減らすと、実際に手間のかかる問い合わせも一定数入ります。ただし、それを防ぐために項目を増やすのは、見込み客を減らして迷惑メールを減らす取引になります。営業メールは送信元で見分けがつきますし、判断に迷う相手は一往復のやりとりで分かります。仕分けは受け取ったあとでできます。
見積りのために予算や希望納期を聞きたいのですが。
その情報が要るのは、多くの場合、問い合わせの時点ではなく商談の時点です。まだ費用の相場も分からない段階で予算欄を出されると、相手は答えようがなく、そこで手が止まります。どうしても入口で聞きたい場合は、任意の選択式にして「わからない」を必ず選べるようにしてください。
入力チェックが厳しすぎると言われました。
電話番号のハイフンの有無、ふりがなの全角と半角、住所の番地の書き方。この種の指定で送信を止めると、相手は何が悪いのか分からないまま離脱します。受け取る側で整えられる形式の違いは、フォームで弾かず、そのまま受け取る作りにしておくのが実務的です。
関心の高い人だけが見る画面
フォームは、いちばん関心の高い人だけが見る画面です。
- ここで失う人が、いちばん惜しい:検討を終えて、選びかけていた相手だから
- 手を止めるのは、答えの無い欄:予算・納期は、入口ではなく商談で聞く
- 必須の基準は1つ:これが無いと返信できないか
- 受け取る側の都合で必須にしない:管理・集計・名簿は、送る側が手間を負う理由にならない
- 項目数以外も疑う:厳しい入力チェック、消える入力内容、画像認証、完了画面の不在
- 過去の受信メールを見れば分かる:返信に使わなかった項目は、聞く必要がなかった項目
まずは自分のスマートフォンで、自社のフォームを最後まで打ってみてください。作った側がいちばん、打っていない画面です。